いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長。書評「リストラなしの「年輪経営」」(塚越寛)

リストラなしの「年輪経営

以前「リッツ・カールトンと日本人の流儀」という書籍で塚越寛さんのことが紹介されていたのですが、書籍に書かれた「長期間にわたって増収増益」しているポイントに興味があって、本書を読んでみました。

本書は企業の経営者向けの書籍でもありますが、”会社とはどうあるべきか”、”経営とはどうあるべきか”、というテーマだけでなく、”人としてどうあるべきか”、”どういう仕事をするべきか”、ということが分かりやすくまとめられた1冊です。読み終わって、印象に残ったポイントをまとめました。

遠きをはかる

本書によく出てくる言葉の1つに、「遠きをはかる」という言葉があります。二宮尊徳の「遠きをはかるものは富み、近くをはかる者は貧す」という言葉からきているのですが、本書では、「短期の利益を追い求めるのではなく、将来の幸福を追い求める」という意味で使われています。

日々仕事をしていると、「今が良ければ良い」「数字が良ければ良い」という目の前の結果にこだわってしまいがちで、こだわることで、本当に自分の目指しているものを見失ってしまいがちです。今の結果を追求することも大切ですが、将来の目的・目標に向かって、余った時間を勉強にあてたり、トレーニングにあてたりすることは、もっと大切だということです。

急成長は敵

伊那食品工業は創業以来48年間、ほぼ増収増益を続けてきたそうです。その秘訣は、”「遠きをはかる」経営を心がけ、いい時も悪い時も無理をせず、「低成長を志す」。”というもの。

ここでポイントなのは、「低成長を志す」という点です。この経営のやり方を、著者は「年輪経営」と読んでいます。木の年輪のように少しずつ成長していくことで、年輪の幅は狭くとも、確実に広がっていくことを重視しているのです。したがって、伊那食品工業では売上目標や利益目標をたてません。

木は年輪の幅の広いところほど、弱く、年輪の幅の広いところとは”急成長”した部分にあたるのだそうです。「遠きをはかる」の項にも書かれていますが、普段生活していると「目先の利益」「目先の成長」にとらわれてしまうことがあります。すぐに結果に結びつく楽な方法ばかりを、探してしまいがちですが、それは弱い部分を作ることを努力していることと同じ事なのかもしれません。

幸せになりたかったら、人から感謝されることをやる

幸せになりたくない人はいません。皆、自分が幸せになりたいと思って生きています。では、どうやったら幸せになれるのでしょうか。先日「本田圭佑は世界一自分を信じる男。「プロフェッショナル 仕事の流儀」を観て」という記事を書きましたが、「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組の中で、本田圭佑はこのように語っています。

自分が本当に幸せになるときって、
人間どのタイミングかなって考えたときに、
自分が喜んでいるときじゃなくて、
人を喜ばせることができたときに、ほんまに自分が幸せな感情になるんかなと。

同じようなことを、本書の中で塚越寛さんはこのように語っています。

人が幸せになる一番の方法は、大きな会社を作ることではありません。
お金を儲けることでもありません。
それは、人から感謝されることです。
(中略)
その事を仏教では「利他」と言います。
(中略)

塚越寛さんは「人のためになることをして損をしたことは一つもありません。むしろ、もっと大きくなって自分のところに返ってくる」と本書の中で語っています。本書に書かれているメッセージは一貫して「目先の成長・利益より将来のこと」「自分のためだけでなく、人のためになることをする」という、正しすぎて道徳の授業に出てきそうな言葉ですが、これらのメッセージが注目されるということは、いかに正しいメッセージを実践できていない企業が少ないか、ということだと思います。

正しいほど実践することは簡単ではなく、すぐに結果が出るわけではありませんが、「遠きをはかり」「ゆっくりとした成長」を心がけ、正しいことを一貫して続ければ、必ず結果は出る。一見遠回りに見える”正しい努力”や”真っ直ぐに壁を超える”ことの大切さを伝えてくれる1冊です。

「いい会社」を作るための十箇条

最後に、本書に書かれていた「「いい会社」を作るための十箇条」を紹介します。

  1. 常にいい製品をつくる。
  2. 売れるからといってつくり過ぎない。売り過ぎない。
  3. できるだけ定価販売を心がけ、値引きをしない。
  4. お客様の立場に立ったものづくりとサービスを心がける。
  5. 美しい工場・店舗・庭づくりをする。
  6. 上品なパッケージ、センスのいい広告を行う。
  7. メセナ活動とボランティア等の社会貢献を行う。
  8. 仕入先を大切にする。
  9. 経営理念を是認が理解し、企業イメージを高める。
  10. 以上の事を確実に実行し、継続する。

また、「真の老舗となるための条件」として、以下の5項目を挙げています。

  1. 無理な成長はしない。
  2. 安いというだけで仕入先を変えない。
  3. 人員整理をしない。
  4. 新しくより良い生産方法や材料を常に取り入れていく。
  5. どうしたらお客様に喜んでいただけるかという思いを常に持ち続ける

関連記事

塚越寛さんに関する記事としては、以下の様な記事を書いています。
料理人ほど甘くて、苦くて、美味しい仕事はない。書評「料理の旅人」(木村俊介)

関連商品

この記事を読んで、興味を持った方はこちら。

「年間休日150日」「残業禁止」などの施策が話題の未来工業の取り組みをまとめた1冊。未来工業も伊那食品工業と同じく、社員の幸せを追求している会社だと思います。

「内部留保なし」「給与は全て公開」「ノルマ無し」などの施策で話題になった、「メガネ21」創業者の書籍。この会社も追求しているのは「社員の幸せ」です。