よいサッカー選手は自分の言葉を持っている。書評「僕は自分が見たことしか信じない」(内田篤人)

サッカー日本代表として65試合(2014年3月現在、以下すべて)に出場し、UEFAチャンピオンズリーグにも18試合出場。右サイドバックとして、代表でもクラブでも確固たる地位を築いている内田篤人。しかし、その素顔はどこか掴みどころがありません。

飄々とした物言い、どんなときも冷静な佇まいで、
どこか「つかみどころのない」キャラクターだと言われている。
ただ、そのほとんどは誤解であり、内田篤人の戦略だ。

自分の本心を人に知られたくない。努力を軌跡を人に言う必要もない。
彼は壁を作ることにより、自分の仕事に集中してきた。

だからこそ、この本は貴重な一冊になる。
彼がはじめて、自分をさらけだし、自らの内面を素直に綴っている。

彼はその端正な外見だけではない。
男らしい一面をもっている。誰よりも優しい心を持っている。
そして、だれよりもサッカーに対して真摯だ。

本書「僕は自分が見たことしか信じない」は、そんな内田篤人が自分の半生を振り返り、自らの考えを素直に語った「素顔の内田篤人」がわかる1冊です。

人が考えている事を予測し、実行する

本書の中で、内田篤人のサッカーに関する考え方で繰り返し出てくるのは、「人が考えている事を予測する」という言葉です。自分にとって理想の監督は、「試合に使ってくれる監督」と語る内田篤人は、試合に出るために、監督の考え方を理解するように務めているそうです。

一番注目していると語っているのが、監督が怒っている時。ほかの選手のどんなパスに起こったのか、どんな動きに注意したのか。怒るポイントに、監督のやりたいサッカーのベースが隠されていることがわかるというのです。

本書には「気を遣える」「異変を察知できる」「予測する力を装備する」といった見出しで、内田篤人の考えが語られています。なぜ、内田篤人は「予測」を重視するのか。それは、内田篤人が考える「勝てるチーム」が、「予測できる」人が集まっているチームだからです。

チームの問題点は何か。どうすればチームは機能するのか。どうすれば得点出来るのか。どうすれば失点を防げるのか。内田篤人には、各々がきちんと予測し、実行できるメンバーが集まっていれば、自然と勝てるという考えがあるからなのです。

日本人らしい考え方が女性に人気の秘密

本書を読んでいると、20代の若者らしからぬ言葉が数多く出てきます。「言い訳や文句は言うべきではない。」「努力や成功は、本来見せびらかすものではない」「感情は表に出さない」「日本を代表しているという意識を持つ」「友だちは大事にしましょう」など。

本書を読んでいて浮かび上がってくるのは、昔から日本男子が持っていた、カッコイイ男の姿です。内田篤人の言葉を読みながら、思わず高倉健が出演していた「男は黙ってサッポロビール」なんて言葉を思い出してしまいました。義理人情に厚く、言葉ではなく行動で語る。古い時代劇の中にだけ残っていると思っていた日本男子の姿が、ここにあります。

本書を読んでいて、内田篤人が女性に人気がある理由がよく分かりました。もちろん見た目のカッコ良さもあるのでしょうが、女性は内田篤人という人が持っている内面のカッコ良さをきちんと理解して、カッコイイと思っているのです。

よいサッカー選手は自分の言葉を持っている

本書を読み終えて、よいサッカー選手はなぜ1冊の本に出来るほど、自身の考えを言葉として語られるのか、改めて考えさせられました。なぜ、よいサッカー選手は自分の言葉をもっているのか。それは、サッカー選手という職業が、自分と向き合い、確固たる考えがないと、才能だけではやっていけない職業だからなのだと思います。

自分がなぜサッカーをやるのか。どうして、日々の練習に取組むのか。どうやったら、試合に勝つことが出来るのか。選手たちはサッカーに打ち込む過程で、徹底的に向き合ってきたはずです。徹底的に向き合う中で、自分なりの答えを出し、日々実践してきたからこそ、成功をおさめることが出来たのだと思います。そして、それはサッカー選手ではない僕のような社会人に求められていることでもあります。

サッカー選手の言葉に人々が共感するのは、彼らの言葉を読んでいると、サッカー選手も自分と同じ人間であり、自分もやれば出来るんじゃないかと思えるからじゃないのでしょうか。

僕も外見は真似られませんが、内面だけでは少しでも内田篤人がもつカッコ良さに近づきたい。
そんなことを考えさせてくれた1冊です。

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