変わらない力、変えない力。動じない力。上原浩治「不変」

昨シーズンボストン・レッドソックスでプレーし、アメリカンリーグ優勝決定シリーズにおいて、1勝3セーブを挙げチームの勝利すべてに貢献し、MVPを獲得。さらに、日本人初のワールドシリーズ胴上げ投手となるなど、素晴らしい活躍を披露した上原浩治さん。僕も、プレーオフからMLB.comなどで映像をチェックし、活躍ぶりを観る度に興奮していました。

上原さんは、なぜ昨シーズン大活躍できたのでしょうか。何か特別なことをしたから活躍できたのでしょうか。違います。むしろ「変えなかった」からこそ、活躍できたのです。では、なぜ活躍できたのか。上原さんの考えをまとめたのが、本書「不変」です。

本書のタイトルでもある「不変」には、様々な意味が込められています。

「変えない」

例えば、「変えない」。

上原さんの1日はシンプルです。単調と言い換えてもいいかもしれません。朝ホテルで目覚め、球場に向かい、球場でご飯を食べて、トレーニング。トレーニングを終えたら、試合に向けて準備を行い、試合で登板。終わったら、軽いトレーニングを行い、球場で食事を取り、ホームゲームの時は、ホテルに戻って、身体のケア。そして、缶ビールを飲みながらブログやTwitterを更新して、眠ります。球場とホテルの往復で、ほとんどボストンの街は観光していないそうです。

特別なことは、していません。しかし、こういうシンプルな生活リズムをずっと続けることが何よりも難しいのです。メジャーリーグのシーズン中は、休みがほとんどありません。西海岸から東海岸への移動は長時間で、時差もあります。睡眠導入剤を使わないと、眠れない日もあるそうです。

たぶん、自分の周囲にストレスを与える要素がたくさんあるので、シンプルな生活をしていないと、もたないのだと思いました。だからこそ、「変えない」で「続ける」ことが重要なのだと思います。

「変わらない」

例えば、「変わらない」。

上原さんの1日のリズムは、メジャーリーガーであることを除けば、サラリーマンの生活とあまり変わりません。サラリーマンの生活も、朝起きて会社に向かい、仕事をして帰宅。もしくは近所の居酒屋で飲んで、眠る、といった具合です。

メジャーリーガーは、確かに特別な存在です。稼いでいる年俸も、サラリーマンとは全然違います。でも、本書を読んで気がつきました。メジャーリーガーも、僕と「変わらない」のだなと。僕と同じように辛い時もあるし、疲れているときもあるし、子供と遊んだり、家族のことを考えなければいけないときもあるのだと。

「動じない」

例えば、「動じない」

僕とメジャーリーガーに共通点があるとはいえ、ワールドシリーズの9回裏のマウンドのような、緊張する場面はサラリーマンにはありません。失敗は許されない。そんな、究極の緊張状態におかれても、「動じない」ようにするにはどうすれば良いのか。

それは、「変えないこと」「変わらないこと」。

自分が決めたことを淡々とこなし、準備を怠らないこと。そうすることで、「変えないこと」「変わらないこと」が自分の自信になるのだと、読んでいて改めて感じました。上手くいかないと、「何か変えなきゃいけない」と考えてしまいがちですし、「変える方法」なら、今なら、インターネットでも本でも、簡単に知ることが出来ます。

でも、「変える方法」が簡単に手に入る時代だからこそ、「変えない」「変わらない」ことが、重要なのだと思います。最近、基本の大切さを教えてくれるような本を、知らず知らずのうちに手に取ることが多いのですが、何気なく手にとった本書もそんな1冊でした。

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