nishi19 breaking news

スポーツでもっと楽しい未来を作る

東京ヴェルディの過去・現在、そして未来。書評「異端者たちのセンターサークル──プロサッカー選手を育てるということ」(海江田 哲朗)

   

観る人も、選手も、楽しんで勝つ。そして、憎たらしいほど強い。

この言葉に該当するサッカークラブを1つ答えてくださいと質問したら、どんなクラブの名前が上がるだろうか。今なら、FCバルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、レアル・マドリーといった、海外のチームの名前を挙げる人はいても、日本のクラブの名前を挙げる人はいないかもしれません。

しかし、かつて日本のクラブでも、観る人も、選手も、楽しんで勝つ。そして、憎たらしいほど強い。そんなサッカークラブが存在しました。少くとも20年前は。そのクラブは、東京ヴェルディ。いや、読売クラブといった方が正確かもしれません。プロ化する前、読売クラブは旧態依然とした日本サッカー界のカウンターカルチャーでした。卓越した技術に裏打ちされたプレー、勝利のために手段を選ばないずる賢いプレー。そんな読売クラブを支えたのが、Jリーグ発足前から存在していた下部組織でした。

下部組織を経て、Jリーガーになった選手は100人を超え、この数字はすべてのJクラブの中で、堂々のトップです。しかし、読売クラブから東京ヴェルディに名前が変わり、年月が経つにつれ、東京ヴェルディは自らのスタイルを失い、J2へと降格します。しかし、それでも下部組織に所属する選手たちは、明日の活躍を夢見て、毎日よみうりランドにあるクラブハウスへと通い続けます。ここには、まだ東京ヴェルディのスタイルがかすかに残っています。

なぜ、東京ヴェルディの下部組織はJリーガーを育て続けることが出来るのか。そして、そんな東京ヴェルディがなぜ凋落したのか。そんな疑問に向き合っているのが、本書「異端者たちのセンターサークル──プロサッカー選手を育てるということ」です。

サッカー職人を育て続けた指導方法

強かった頃の東京ヴェルディの指導方法は、独特でした。大人と子供がミニゲームをします。大人は子供に本気で戦います。本気で身体をぶつけ、テクニックをみせつけ、時には挑発する。子供は、そんな大人たちに歯をくいしばりながら立ち向かい、サッカーに必要な技術、戦術、そしてメンタルを身につける。まるで、徒弟制度で職人を育てるようなやり方で、サッカー選手を育ててきました。年月が経つにつれ、やり方は変わり、指導方法も体系化されてきたと思いますが、基本的な考え方は、こうした身をもって教える指導法にあると思います。

サッカー職人たちが伸び悩んだ理由

しかし、東京ヴェルディの指導方法を続けていると、必ず18歳から22歳以降伸び悩みます。「将来の日本のエース」と呼ばれた東京ヴェルディの下部組織出身の選手が、大成せずに選手生活を終えた選手は、片手では数え切れないほどいます。その理由は何か。そのヒントは、ガンバ大阪の礎をつくった上野山信行さんの言葉に隠されている気がします。

(ヴェルディは)社会に出て行く子を育てているのに、きちんと指導できていない。確かに巧い。でもそこに慢心している。反省がない。謙虚さがない。
(中略)
(ヴェルディの育成を作った)小見さんたちは日本のためを考えたのかな。読売クラブだけど、ヴェルディだけを考えたんと違う?サッカーは世界のスポーツだから、僕は世界に基準をおいた。ガンバが目標だとそこで止まって努力しなくなる。まずはレギュラーに定着し、代表に選ばれ、その先に世界がある。思考に広がりがなければ人は伸びない。

希望の灯りが大きくなることはあるのか

5年前、僕は東京ヴェルディのサッカーを観るために、毎週スタジアムに行っていた時期があります。観る人も、選手も、楽しんで勝つ。そして、憎たらしいほど強い。そんなサッカーが復活するんじゃないか。期待をこめて、観戦し続けました。

しかし、あれから5年。まだ、東京ヴェルディはJ2にいます。優秀なスタッフも、クラブを去って行きました。しかし、よみうりランドで日々練習する下部組織の選手たちが目指すのは、東京ヴェルディで活躍し、世界で活躍できるサッカー選手です。辛うじて、下部組織に東京ヴェルディの希望は残っています。

希望はクラブに大きな灯りをともすのか、それとも。東京ヴェルディの未来は、日本サッカーの未来でもあります。このチームの灯りが消えてしまうのは、あまりにも惜しい。だからこそ、僕は東京ヴェルディの行く末を、見守りつづけたいと思います。

おすすめ商品

 - , , , ,