2017年J2第38節 V・ファーレン長崎対名古屋グランパス プレビュー「フェリペ・ガルシアのような選手がチームを救う」

2017年J2第38節、名古屋グランパスの対戦相手はV・ファーレン長崎です。まず、第37節までのデータを基に、V・ファーレン長崎のデータから分析した特徴を紹介します。

セットプレーからの得点の割合が66%を占めるV・ファーレン長崎

Football-LABのデータによると、シュート数を攻撃回数で割った「チャンス構築率」は9.7%でリーグ12位。攻撃回数は123.5回でリーグ20位と攻撃回数が少ないチームで、相手陣内にボールを運ぶのが上手いチームではないのではないかとデータだけだと読み取れますし、1試合平均の30m侵入回数も28.2回でリーグ22位というデータも裏付けているように感じます。

ただ、気になったのは、1試合平均のコーナーキックの本数です。1試合平均のコーナーキックの本数は、5.2本でリーグ5位。コーナーキックというプレーは、ゴールラインの外に相手チームがボールを蹴り出さないと発生しないプレーです。したがって、相手陣内に侵入する回数は少ないが、効率よく相手陣内にボールを運んでいるチームなのではないかと読み取れます。また、コーナーキックはサイドからボールを運ぶプレーが多いと、多く発生します。たぶんV・ファーレン長崎は、自陣でパス交換しながら、相手DFの背後にロングパスを出し、サイドに配置された選手が走ってボールを受け、相手陣内にボールを運ぶ。そんな攻撃を仕掛けてくるのではないかと思います。

そして、V・ファーレン長崎の攻撃の特徴は、コーナーキックの本数と共に直接フリーキックの本数が多く、セットプレー関連の得点の割合が、他のチームと比較しても高い事です。1試合平均の直接フリーキックの本数は、14.6本でリーグ3位。1試合平均のボール支配率が44.7%であることを考えると、攻撃回数やボール支配率の割に、コーナーキックのデータと共に直接フリーキックの本数が多いという事がよくわかります。そして、V・ファーレン長崎の総得点の内、実に66%がセットプレー関連の得点から生まれています。これほど、セットプレーからの得点比率が高いチームは、セットプレーが得意なチームが多いJ2でも他にはありません。

守備のデータを分析すると、攻撃を受ける回数は124.5回でリーグ5位。攻撃回数が少ないチームは、攻撃を受ける回数が減ります。シュートを打たれる回数が1試合平均13.5本でリーグ12位。被チャンス構築率は10.9%でリーグ15位。決して、ボールを奪い返す守備が上手いチームではありません。しかし、被シュート成功率は7.4%でリーグ4位。相手に与えているのは、失敗しやすいシュートチャンスであるととともに、相手のシュートチャンスを防ぐ回数が多いという事が読み取れます。

いかに相手陣内にボールを運ぶのか

この試合の名古屋グランパスの戦い方で注目している点は、2点あります。

1点目は「いかに相手陣内にボールを運ぶのか」です。前回、V・ファーレン長崎と対戦した時は、V・ファーレン長崎は5-3-2のフォーメーションで中央のエリアからボールを運べないように守ってきました。同じようにV・ファーレン長崎が守るとするならば、サイドは空いていると考えられます。4連勝中の名古屋グランパスは、中央からも、サイドからもボールを運べています。

中央からボールを運ぶ時に重要な役割を果たしているのは、玉田です。ボールを渡せば、奪われずにボールを運び、味方が次にボールを受けるための場所に移動する時間を作ってくれる、特別な選手です。玉田がボールを受けられている時は、中央からスムーズにボールを運べています。この試合は、玉田にボールを渡した瞬間、V・ファーレン長崎のDFとMFが玉田を挟み込むようにしてボールを奪おうとするはずです。玉田がボールを受けて、奪われずに味方に渡せるか。この回数が多いほど、名古屋グランパスが中央から上手くボールを運べているかどうかが分かります。

また、中央からボールを運べなくても、名古屋グランパスには右DFの宮原、左DFの和泉の2人が、ドリブルでボールを運んでくれます。宮原のスピード、和泉の右から左に切り替えしてボールを運ぶプレーは、相手は分かっていても止められません。中央からボールが運べるのはベストですが、中央からボールを運べなければ、2人が相手陣内にボールを運んでくれます。中央からなのか、サイドからなのか、いかに相手陣内にボールを運んで、V・ファーレン長崎の守備を崩そうとするのか、そして相手の守備にいかに対応するのかが、この試合のポイントです。

上手くいかなかった時にどうするのか

2点目は、前節の湘南ベルマーレ戦のプレビューにも書いた「上手くいかなかった時にどうするのか」です。前節はシモビッチを後半から出場させ、「高さ」と「強さ」がある選手を入れて、問題を解決しました。しかし、前節負傷したガブリエル・シャビエルの代わりにシモビッチが入る今節は、ベンチにシモビッチはいません。上手くいかなかった時に、別の解決策を選択しなければなりません。

幸い名古屋グランパスにはスタメンの選手以外にも、素晴らしい選手がいます。サイドからのパスを受けるのが上手い永井、相手陣内にボールを運ぶプレーが上手い杉森、攻守で動き続けられる押谷、身体の強さを活かして相手の守備を崩せるフェリペ・ガルシア、正確なキックを持つ内田など、特徴がある選手が揃っています。

特に注目しているのは、フェリペ・ガルシアです。出場機会が多い選手ではありませんし、特別凄いプレーをしている選手ではありませんが、与えられた役割を黙々とこなし、チームのために尽くす姿勢がプレーから伝わってくる選手です。

どんな選手でも出場機会が減ったり、自分がやりたいプレー以外のプレーを求められるとふてくされる選手が多く、特に外国籍選手は出場機会が減ると、その傾向があります。しかし、フェリペ・ガルシアは違います。出場機会がなくてもチームの勝利を喜び、求められているプレーが出来るように日々努力し、試合では懸命に与えられた役割と期待に応えようとする姿勢は素晴らしいと思います。

僕はフェリペ・ガルシアのプレーには不満がありますが、彼のプレーする姿勢に不満を抱いた事はありません。そして、チームを土壇場で救うのは、フェリペ・ガルシアのような選手だったりします。このタイミングで、フェリペ・ガルシアにチャンスが与えられそうなのは、偶然ではないと思います。

シーズン終盤になると、勝敗を分けるのは戦術の違いではなく、もっと小さな差です。誰かがちょっと気を抜いたり、足を滑らせたり、ほんのちょっとの違いが勝敗を分けます。ほんのちょっとの違いを作り出して、勝利を勝ち取るチームはどちらなのか。注目したいと思います。

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