スポーツだってデザイン出来ることがある。書評「WIRED(ワイアード)VOL.15」

最新のプロダクトから、ビッグデータやコミュニティ、企業、仕事、生活習慣などなど。今、生活を取り巻くあらゆることが「デザイン」の対象になっています。最近、デザインという言葉は、単にきれいで整った絵を描くことだけに使われなくなりました。むしろ、新たな仕組みや見方を設計するという意味で使われる言葉になったと、僕は感じています。

今、デザインに関わっている人は、どんな人がいるのか。デザインの最前線で働いている人は、どんな事を考えているのか。テクノロジーの最前線を伝えてきた雑誌「Wired」の最新号は、そんな「デザイン」の今を伝える特集です。

1万2000人の会員が運営するフットボールクラブ

本書には、Appleのジョナサン・アイブ、Airbnb、Burberry、といった企業のデザイナーのインタビューや、レポートが掲載されています。それぞれ面白いのですが、僕が一番面白いと思ったのは、巻末に掲載されたウニオン・ベルリンというドイツ・ブンデスリーガ2部のフットボールクラブの話です。

ウニオン・ベルリンは、ちょっと変わった形式で運営されています。クラブは会員によって構成され、個人や企業の所有物ではありません。1年に1回会員が集まる会議が、クラブの最高機関です。このメンバー会議から、アウトソースされたトップチームの経営を任せる幹部を選出します。メンバー会議で委託された幹部は、クラブメンバーに営業報告書を提出し、承認されなければ、メンバー会議で新たな幹部を選出します。スポンサーは、資金を提供しますが、クラブ運営には関与できません。

会員費は毎月10ユーロ。クラブの会員数は、2部のクラブでありながら、1万2000人を超えています。この会員数がクラブと会員との結びつきの強さを現しています。

フットボールクラブとコミュニティ・デザイン

クラブと会員との結びつきを示すエピソードも、今回の特集では数多く紹介されています。会員の身内にお祝い、不幸があったりすると、ハーフタイムに祝辞が読み上げられる。新加入の選手の息子が難病を患っていることを知った会員は、皆で選手の息子の目を題材にして絵を描き、スタジアム中張り巡らせるというアイディアを考えつきました。そして、試合前日に、地元の小学生、幼稚園児、ファンの家族、選手や選手の子供たちが集まって絵を描きました。加入してまもなく、まだ活躍していないのに励ましてもらった選手は、言葉が出ないほど嬉しかったそうです。

スポーツなので、もちろん勝ち負けは大切です。でも、人が集まって楽しい時間を過ごすために必要な要素は、チームが勝ち続けるだけじゃないという事を、ウニオン・ベルリンの事例は教えてくれます。そして、人が集まって楽しい時間を過ごすために何をすべきか考えることは、近年コミュニティ・デザインという言葉に置き換えられ、注目されています。

デザインとスポーツ。一見、共通点が少ない分野に思えますが、切り口や見方を変えると、意外な共通点があるし、双方出来ることがたくさんあるのではないか。そんな事を考えさせてくれる、興味深い特集でした。

関連商品