1つのクラブで長年プレーし続けられる選手の条件

2013/12/08

先日、1つのクラブで長年にわたってプレーしてきた選手2名が、それぞれ退団&引退を発表しました。

1人は、浦和レッズの山田暢久。先日浦和レッズからの退団が発表されました。20年間にわたって浦和レッズでプレーし、J2降格もACL制覇も経験し、Jリーグ500試合出場も記録しました。高い技術と抜群のスピードと体の強さを持ち合わせた選手で、どんな場面でも飄々とプレーする姿が印象に残る選手でした。

もう1人は、川崎フロンターレの伊藤宏樹。今シーズン限りでの引退が発表されました。2001年の入団から13年間にわたって川崎フロンターレでプレーし、j2時代を知る数少ない選手です。中村憲剛の言葉を借りると「日本で1番きれいにボールを奪うDF」です。タックルをせず、体をぶつけずに、すっと相手とボールの間に体を入れてボールを奪う技術に優れた選手でした。

この2人のように、1つのクラブで長年プレーし続けられる選手というのは、限られています。選手は活躍の場をチームを移ることが当たり前の時代に、山田暢久や伊藤宏樹のような選手はどんどん珍しくなっていくのだと思います。そこで、「1つのクラブで長年プレーし続けられる選手の条件」と題して、どんな選手が1つのクラブで長年プレーし続けられるのか、考えてみました。

チームメイトとの競争に勝ち続ける

試合に出ないでクラブに残れるというのは、まずありえません。選手は相手チームと戦う前に、まずは日々の練習でチームメイトと戦って、スタメンもしくはベンチ入りを獲得していく必要があります。毎シーズン選手が入れ替わる中で、チーム内の競争に勝ち続けるということは簡単ではありません。

監督の要求に応じたプレーが出来る

選手の入れ替わりも激しいですが、同じくらいかそれ以上に入れ替わるのが監督です。それまでレギュラーとして活躍していた選手が、監督が替わったとたんにレギュラーから外されチームを去ってしまう、なんてことはよくあります。

冒頭で紹介した山田暢久と伊藤宏樹は、監督の要求に応じたプレーが出来る典型的な選手です。山田暢久は、監督の求めに応じて、サイドバック、ボランチ、トップ下、リベロなど様々なポジションをこなすことが出来る選手でした。伊藤宏樹もDFのポジションなら左右どこでもこなすことが出来ます。

監督によって、選手に要求することは違いますが、目的はただ1つ。チームの勝利です。目的を理解した上で、監督の要求に対応し、なおかつ自分の色をプレーで表現することが出来る選手は、どんな監督のもとでもプレー出来ると思います。

年齢によってプレースタイルを変えられる

現役生活を続けていると、体力は次第に衰えていきます。体の衰えとともに今までのプレーが通用せず、試合に出られなくなる選手もいます。試合に出続けるには、時に自身のプレースタイルを変えることが求められる時があります。

マンチェスター・ユナイテッドで20シーズン以上にわたってプレーするライアン・ギグスは、若い頃は縦に速いドリブルが武器の選手でした。ところが30代半ばから、縦に速いドリブルで相手を抜く場面が少なくなったものの、代わりに相手を抜ききらずに上げるクロスボールや、意外性のあるパスで、味方の得点をアシストするようになりました。

たぶん、ギグスもスピードで抜けなくなったことを、実感した時があったのだと思います。そこで、スピードにこだわらず、他の技術を活かしてチームに貢献できる道を選んだからこそ、40代を過ぎても現役を続けていられるのだと思います。

チームを自分の色に染め上げる

まれに、自分中心のチームを作りあげることで、チームの顔として君臨し続けている選手もいます。ローマのフランチェスコ・トッティがその1人です。ローマはトッティをいかに活かすか、を考えて長年チームが作られています。それだけ、トッティという選手の影響力が、選手だけでなくスタッフに対しても大きいのだと思います。

もちろん、トッティという選手の技術の高さが、他の選手に比べてずば抜けているのも、大きな要因です。こうして、チームを自分にとってプレーしやすい環境に改善していくというのは、選手は必ずやらなければいけないことだと思います。これは、会社につとめている僕のような人でも同じです。少し、耳が痛いです。

無事これ名馬

サッカー選手は怪我によって人生を狂わされることが、少なくありません。怪我が少ない。大きな怪我をしない。「怪我をしないからこそ、試合に出られる。試合に出られるからこそ、チームに残る事が出来る。無事これ名馬」といいますが、怪我をしないということは、1つの能力だと思います。

どんな時でもクラブのために

サッカー選手でも、会社員でもそうですが、良い時ばかり起こるわけではありません。むしろ喜びは一瞬で、辛い時や、何も起こらない時の時間の方が多いものです。そんな時に、選手がどう振る舞うのか。サポーターはそこを見て、選手を支持するかどうか決めている気がします。

冒頭で紹介した山田暢久と伊藤宏樹も、よい時ばかり経験してきたわけではありません。山田暢久はJ2降格を経験し、一昨年はJ2降格の危機に立たされました。伊藤宏樹も、J2時代を経験し、J1昇格後もナビスコカップやリーグ戦では、あと一歩の所でタイトルを逃してきました。でも、2人ともうまくいかない時でも、移籍せずに所属チームで戦う道を選んできました。そんな姿をサポーターは見ているからこそ、長年プレーしている選手を支持するのだと思います。

山田暢久や伊藤宏樹のような選手は、ここに至るまでの時間の積み重ねがあるからこそ、支持されてきていることを改めて実感しました。Jリーグが誕生して、20年。長年プレーした選手の退団&引退に立ち会うことが出来るようになったという点にも、Jリーグが積み重ねてきた歴史の重みを感じます。

海外で活躍する選手も増えて欲しいですが、同じくらい第二第三の山田暢久や伊藤宏樹も出てきて欲しい。僕はそう思います。

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