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山本昌邦の知識と経験は、まだ日本サッカーに必要だ。書評「深読みサッカー論」(山本 昌邦,武智 幸徳)

   

父親から勧められて読んだ1冊。正直に言うと、期待せずに読み始めたのですが、思いの外、面白かったです。

本書「深読みサッカー論」は、2002年ワールドカップ日本代表コーチや、アテネオリンピック日本代表監督を務め、現在はNHKのサッカー解説者として活躍している山本昌邦さんと、日本経済新聞で読み応えのあるサッカー記事を書いている武智幸徳さんによる、ワールドカップをテーマに、あまり知られていないサッカーに関する考え方について語られた1冊です。本書では、武智さんが質問し、山本さんが答える、といった具合で、話が進んでいきます。

ワールドカップは試合前の準備で決まる

本書を読んでいて特に印象に残ったのは、戦うための準備について語られていた箇所です。

山本昌邦さんは、NHKで解説をしていると、よく水分補給の重要性について口にします。暑い時期に水分を取ること、水分を取るだけでなく首筋にかけたりして身体を冷やすことの重要性を繰り返し語ってきました。

しかし、本書を読んでいると、こうした水分補給の重要性は、戦うための準備として氷山の一角だということがよく分かります。

例えば宿舎選びをとっても、選手のストレスを取り除くためにどうすればよいのか。1人部屋がいいのか、2人部屋がいいのか、など。給水ボトルにしても、どのタイミングで凍った水をおいておけば、試合中に最適な温度で水が飲めるのか、など。ワールドカップに勝つために考えなければならないことは、きりがありません。

余談ですが、オリンピックは選手のスタッフに与えられるIDの数が制限されるため、アテネオリンピックの時は、どのスタッフにIDを与えるのか、知恵を絞ったそうです。一部のスタッフは、選手とは別の宿舎に泊まり、選手のサポートをする、なんてことをしたりしながら、最善の準備が出来るように尽くしたそうです。

山本さんは、日本サッカーが国際大会で少しづつ成績が残せるようになったのは、こうした戦うための準備をきちんを行い、選手が持てる力を発揮できるような環境を作ることに配慮してきたからだと語っています。しかし、ブラジルワールドカップの敗因に、コンディション調整が上手くいかなかったことが挙げられています。

山本さんは、「日本代表はブラジルワールドカップに向けた準備は上手くやるだろう」と語っていましたが、結果的には様々な要因もあり上手くいきませんでした。本書を読んでいると、ワールドカップとは試合をする前から勝負は始まっているのだと改めて感じます。

スタッフの経験は国の財産

戦うための準備を進めるために、山本さんが重要なポイントとして挙げていたのが、スタッフの経験です。ブラジルワールドカップには、和田一郎さんというコーチと、早川直樹さんというコンディショニングコーチがいました。共に、長年日本代表に関わり、日本代表のロッカールームで、ホテルで、何が起こっていたのかを知る人物です。

山本さんは、こうした国際大会で経験を積んでいるスタッフがいることが、チームにとって、国にとって大きな財産であり、戦うための準備に必要なのだと語っています。ブラジルワールドカップで優勝したドイツ代表は、2006年から同じスタッフで活動しています。ドイツ代表をみていると、経験を積んでいるスタッフの重要性はよく分かります。

経験を積んでいるスタッフの重要性は、山本さん自身の体験が元になっています。2002年ワールドカップでベスト16の時にコーチを務めていた山本さんは、アテネオリンピックを目指すU-23日本代表の監督に就任します。当初は、日本代表のコーチを務めていましたが、途中から日本代表のコーチを離れます。2004年のアテネオリンピック終了後は、日本代表のスタッフも退任します。

当時の日本代表の監督はジーコでした。ワールドカップには選手としては出た経験はありますが、監督としては経験がありませんでした。ドイツワールドカップの結果は、皆さんがご存知のとおりです。山本さんは当時を振り返って、「戦うための準備がきちんと出来ていなかったのではないか」「自分がスタッフとして関わっていたら、もう少し上手く出来たのではないか」という思いがあるのだと語っています。

本書を読むまでは、僕は、山本さんについて、「過去の人」という印象を少なからず持っていました。しかし、本書を読み終えて、山本さんが培ってきた国際大会での経験は非常に貴重であり、まだまだ日本代表の現場で活かせる点があるのではないかと感じました。本書を読んでいると、本人は育成に興味を持っているようなので、育成年代のコーチとして、腕を振るってもらっても面白いのではないかと思うのです。

本書はブラジルワールドカップの前に出版された書籍ですが、ブラジルワールドカップの結果を踏まえて読んでみると、より楽しめる1冊だと思います。
勧めてくれた父親に感謝です。

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