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書評「絶望の隣は希望です!」(やなせ たかし)-アンパンマンが教えてくれる「正義とは何か」-

   

絶望の隣は希望です!

図書館の棚を眺めていた時、ふと目に飛び込んできたので、借りてみました。予想以上に面白かったので、ご紹介します。

本書「絶望の隣は希望です!」は、アンパンマンや、「手のひらを太陽に」の作詞で知られるやなせたかしさんが、東日本大震災後に自分の半生を振り返りながら、アンパンマン誕生のエピソードを交えつつ、元気に生きるためのメッセージを書いた1冊です。

大人が読んでもドキッとするアンパンマン

子供が出来て改めて感じたのは、アンパンマンという作品が伝えているメッセージの重みです。大人が読んだり、耳にしたりしても、心に残るようなメッセージがさりげなく入っていることに気づかされます。

例えば、主題歌のアンパンマンのマーチ。「なんのために生まれて、なにをして生きるのか。答えられないなんて、そんなのは、いやだ!」という歌詞は、大人が読んでもドキッとします。この歌詞は、やなせさん自身が自分自身に問いかけてきた、生きていくうえでの命題そのものなのだそうです。

正義とは何か

アンパンマンには、やなせさんが考える「正義とは何か」というメッセージが込められています。やなせさんは、かなり前から、新しいスーパーマンものを描きたいという気持ちがあったそうです。相手をとことん叩きのめして、森や街を破壊して、それで正義が勝っても、本当に正義なのかという疑問を持っていたそうです。それは、やなせさんが戦時中に軍隊で感じたことでもあります。

いつの時代にも、飢えて死んでいく人がたくさんいます。罪もなく死んでいく人を見捨てて戦っているのはおかしい。だとしたら、ひっくり返らない正義とは何か。それは、地震で下敷きになった人を助けたり、飢え死にしそうな人にパンをあげるということ。自分の身を犠牲にしても、ひもじい思いをしている人に、食べ物をあげること。それが、やなせさんが行き着いた答えでした。

発行当時はクレームの嵐だったアンパンマン

ところが、アンパンマンのパンを食べさせるシーンは、発行当時は大人たちから「顔をちぎって食べさせるなんて、あまりにもひどすぎる」「もう、二度とあんな本を描かないでください」といったクレームを受けたそうです。ところが、幼稚園児の間でじわじわと人気が出始め、図書館ではいつも貸し出し中に。この時、やなせさんは60歳目前。「代表作がない」というコンプレックスを抱えていたやなせさんは、60歳を目前にして、ようやく代表作を作ることが出来たのです。

ヒット作に恵まれたのは、60歳を過ぎてから

アンパンマンがヒットするまでのやなせさんは、ずっと「自分の居場所がない」と思っていたそうです。美術系の大学で青春を謳歌していたやなせさんは、戦争が始まった後に軍隊に入隊します。終戦後に帰国し、グラフィックデザイナーとして働き始めた後、漫画家として独立しましたが、代表作に恵まれません。とにかく、舞い込んだ仕事はなんでもやろうということで、司会や構成、漫画に雑文、ジャケットのデザイン、ラジオのコントの脚本やドラマなど、なんでもやったそうです。ついたあだなが、「困ったときのやなせさん」「速書きやなせ」。顔は売れたけど、漫画は売れない。そんなジレンマを、ずっとかかえて来たのだそうです。

本書を読み終えて、改めてアンパンマンという作品の奥深さについて考えさせられました。子供向けの作品ですが、むしろ大人が読んでも読み応えがあるのは、やなせさんがまっすぐに、自分の人生で感じた普遍的な真理を、きちんと描いているからだと思います。

そして、やなせさんがアンパンマンという代表作に恵まれたのは、60歳目前です。ちょっとやそっと上手くいかないからといって、投げ出してはいけないのだなと、本書を読み終えて、改めて感じました。上手くいかないことは、たくさんあります。投げ出したくなることもあります。でも、人のために役に立つことを続けていれば、いつか陽の目をみる時がくる。そんなことを、やなせさんの生き方は教えてくれます。

読み終えて、僕は不思議と元気が出ました。ちょっと落ち込んでいる時などに読むことをおすすめします。

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