2017年J2第28節 町田ゼルビア対名古屋グランパス プレビュー「戦略と戦術を支える自信」

2017年J2第28節、名古屋グランパスの対戦相手は町田ゼルビアです。まず、第27節までのデータを基に、町田ゼルビアのデータから分析した特徴を紹介します。

ボールを運ぶのが上手くないことを逆手にとった町田ゼルビアの戦い方

Football-LABのデータによると、シュート数を攻撃回数で割った「チャンス構築率」は9.6%でリーグ12位。攻撃回数は142.6回とリーグ1位。つまり、ボールを保持して攻撃を仕掛けている回数が多いチームです。ただ、30mラインの侵入回数は、31.9回とリーグ17位と攻撃回数の割にはあまり効果的に敵陣に侵入出来ていません。町田ゼルビアのデータを紐解くと、パス数は1試合平均292.7回でリーグ22位。ボール支配率も45.7%でリーグ18位です。ゴール数をシュート数で割った「シュート成功率」は、9.2%でリーグ15位。1試合平均のシュート本数が13.7本でリーグ6位という事を考えると、シュート成功率は改善の余地がある気がします。

攻撃回数が多いチームは、「ボールを奪って、奪われる」回数が多いチームでもあります。町田ゼルビアの守備のデータを分析すると、1試合平均で相手チームの攻撃を受ける回数は143,7回でリーグ22位というデータからも、町田ゼルビアというチームが「ボールを奪って、奪われる」という回数が多いことが分かります。

ただ、町田ゼルビアが相手チームに打たれたシュート数を攻撃回数で割った「被チャンス構築率」は、7.6%でリーグ1位。つまり、ボールを奪って、奪われるチームでもありますが、シュートは打たれていない。このデータからは、FW、MFの守備が上手いチームであることが読み取れます。名古屋グランパスとしては、町田ゼルビアの守備をいかにかいくぐってボールを相手陣内に運べるかがポイントになりそうです。町田ゼルビアは「シュートを打たせない守備」は上手いチームですが、失点数をシュートを打たれた回数で割った「被シュート成功率」は10.2%でリーグ14位と、ゴール前の守備に課題があるのではないかということが読み取れます。

第14節に対戦した時のレビューにも書いたのですが、町田ゼルビアが「ボールを奪って、奪われる」チームなのは、極端に選手間の距離を狭くしてプレーしているからです。町田ゼルビアは、フィールドの横幅の1/3に11人が入っている程、選手間の距離を短くして戦います。選手間の距離を狭くすることによって、相手選手に素早く距離を詰めてボールを奪う事が出来ます。また、ボールを奪ったら、味方が近くにいるので、短い距離のパスを正確につなげれば、ボールを相手ゴール方向に運びやすくなります。

ただ、町田ゼルビアは、ボールを奪った後に相手ゴール方向にボールを運ぶプレーが上手くありません。そこで、町田ゼルビアはDFがボールを持ったら、ラグビーのキックのようにタッチラインに向って蹴り、陣地を稼ぎ、相手のスローインで再開したボールを奪って攻撃することで、ボールを運ぶプレーが上手くないという問題を解決しようとしています。このボールの運び方は、ブンデスリーガのレヴァークーゼンで2017年3月まで監督を務めていた、ロジャーシュミット監督が好んで採用していた戦い方です。

ちなみに町田ゼルビアは、1試合平均のスローインの回数が34.0回でリーグ1位、そして守備時に「クリア」と呼ばれるタッチラインに蹴り出すプレーの回数も、1試合平均30.8回でリーグ1位。データからも町田ゼルビアの戦い方が読み取れます。

この戦い方はメリットもありますが、デメリットもあります。デメリットは、選手の距離が短いため、選手が密集しているエリアとは反対のエリアには、大きなスペースが空いているということです。また、守備の時にボールに対して素早く距離を詰めるのはよいのですが、ボールに意識が集中しているため、選手が出す矢印がボールに集中しやすく、背後にパスが出た時に対応が遅れる事があるからです。

「ミスを恐れない」イム・スンギョム

この試合は名古屋グランパスがボールを保持する時間が長くなると思います。ただ、町田ゼルビアはFWとMFの守備が上手いチームです。いかに相手の守備をかいくぐり、相手陣内に素早くボールを運べるかが、この試合のポイントになりそうです。

僕が注目しているのは、イム・スンギョムのプレーです。イムは第25節のロアッソ熊本戦でスタメン出場してから3試合連続でスタメン出場中。チームもイムが出場してから3連勝を記録しています。イムの良い所は「ミスを恐れない」事だと思います。イムのプレーを観ていると、ボールを奪いにいくタイミングが早すぎたり、攻撃時にボールを相手陣内に運ぶ時に相手がいる場所に突っ込んでいったり、まだまだプレーの選択という点ではミスが目立ちます。攻撃が好きなのは分かるのですが、攻撃に出なくてよいタイミングで相手陣内深くに攻め上がってしまうところも気になります。僕が町田ゼルビアの監督なら、宮原よりイムが守るエリアを狙って攻撃を仕掛けると思います。

ただ、イムが凄いのは「ミスを恐れない」事です。一度ミスをしたからといって、自信をなくしてプレーが消極的になるのではなく、同じプレーにもう一度トライしたり、プレーを工夫して改善しようとトライし続けるところが凄いと、僕は感じます。正直言うと、イムより櫛引や酒井の方が守るというだけだったら上手いと思います。しかし、イムが起用されるのは、櫛引や酒井と比べて、ボールを持つことを恐れず、ミスを恐れず、トライし続けているからだと思います。

町田ゼルビアのように、FWとMFの守備が上手いチームと対戦した時、これまでの試合のように、イムがボールを相手陣内に運ぶプレーや相手に奪われずに味方につなげるかどうか注目したいと思います。イムは相手が素早く詰め寄ってくると、アウトサイドでパスを出す癖があります。DFが自陣で出すアウトサイドのパスは、味方に通れば「良いプレー」と評価されますが、通らなければ批判されるプレーです。

この試合は今までの試合以上にイムに対して相手の守備がキツくなる事が予想されます。もう3試合に出場したので、相手もどんな選手か分かっています。Jリーグは相手チームへの対策に優れているチームが多く、同じ戦い方は3試合は通用しません。イムはこの試合に出場したら4試合目。疲れも出てくるので、プレーの質が落ちてくる可能性があります。プレーの質が落ちてきた時に、これまでと同じように「ミスを恐れない」プレーが出来るか。僕はそこに注目しています。

名古屋グランパスのサッカーは、選手が「ボールを奪われない」「ボールを奪える」という自信がなければ成り立たないサッカーをしています。数的同数でも相手の攻撃に対応できるという自信、数的不利でも相手にボールを奪われないという自信。技術に裏打ちされた自信が、チームの戦略と戦術を支えています。この試合も引き続き自信をもってプレーできるか。僕はイムのプレーを中心に注目したいと思います。

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